ありのままブログ

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反骨精神と川久保玲@Met~~ファッション業界の今

先日NYのメトロポリタン美術館で行われている川久保玲(コムデギャルソン)の特別展「Rei Kawakubo/Comme des Garcons Art of the In-Between」に行ってきました。

 

川久保玲と言えば、世界のファッション常識に風穴を開けた日本が誇るデザイナーです。既存の価値観を破壊し、新たな価値観を創造したデザイナーの展示は本来保守的なMetではなく、前衛的なMoma(NY近代美術館)の方が相応しい気がしました。しかし、Metで行われたということは、ギャルソン創設以来約40年の間に大きく認められたということでしょうか。 

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 展示場ではこのような彼女の過去の作品が9セクションに分かれ展示されています。場内の内装も川久保さんが考えられたそうで、御年74歳になられた今年も精力的に活動されています。

  

上の写真の作品を見てください。これだけ複数の生地を使用し、更に立体的な仕上がりにしたことには本当に驚きました。自分の服を選ぶときを想像してみてください。あまり複数の色を取り入れないのではないでしょうか。それは、色が混ざりすぎて収まりが付かなくなるからです。特筆すべきが、パターンの多さです。これだけ多くのパターンを使用して、立体的に服を作る。これは恐ろしく、手間暇がかかった作品だと思います。色や生地の質感などを考えて、最良の組み合わせを考え出す力、そしてこれを作ろうと思うアイデア。ほとんどの人は作ろうと思っても、道半ばで挫折すると思います。しかし、彼女はこれを作り上げました。

 

世界に認められたのは、このアイデア、作品に対する情熱、そして強い心を持っていたからではないでしょうか。 f:id:johnsons:20170906044554j:plain

 この作品を見ると恐らく、批判する人も出てくると思います。理由は単純に、既存の服とはかけ離れすぎていて、よくわからないからではないでしょうか。

 

2011年8月25日のウォールストリートジャーナルのインタビューでこのように答えています。作品に対して「よかったですね」「綺麗だったですね」と皆から評価を受けたら、不安で仕方ないです。そんなにわかりやすいものを作ったのかと、自己嫌悪に落ちってしまいます。

 

今回の展示の題にあるように、彼女は2つの概念の間を問うよな、今までにないものを追い求めてきたのではないでしょうか。彼女は新しものを追い求め、その探求心から実際に新しいものを創造してしまいました。その結果、コムデギャルソンは大きく成長し日本を代表するブランドまでのし上がりました。

 

彼女が成功したのは、既存の概念に縛られず、自分が理想とするものをとことん追求したからではないでしょうか。

 

現在の日本のファッション業界、または世界のファッション業界はどのようになっているのでしょか。あまり知られていないですが、どうやら衰退を続けているようです。1991年の日本のファッション業界の売上が15兆円だったのに対し、2013年には10兆円まで下がってしまっています。

 

この大きな原因が、H&M、ユニクロ等のファストファッションが大量生産を武器に価格で勝負をしてきたからです。大量生産すると、そこには大きな在庫リスクが発生し、出来るだけシンプルで販売しやすいものを生産するようになります。そして、世界中で着られている服の同質化が始まります。

 

日本のお店を周っていて、どこも同じものばっかりだなと思った事はないでしょうか。大量生産で安く作ったは良いが、売れ残っては元も子もないということで、無難な商品しか作らなくなってしまいました。

 

川久保玲さんの想いとは裏腹に、今のファッションは同質化の一途をたどっています。そして衰退していく産業となってしまいました。

 

コムデギャルソンの道を行くことが成功への道とは思いませんが、同質化ではない別の道を模索する必要が出てきているのではないかと思いました。